障害者雇用が進まない5つの業界とその原因

障害者雇用が進まない5つの業界とその原因

2021年3月末までに、民間企業(従業員45.5人以上規模)の雇用率が2.3%へと引き上げられるなど、障害者雇用が注目されています。

厚生労働省の実近調査では、雇用障害者数(56万608.5人)、実雇用率(2.11%)ともに過去最高を更新。とは言え、法定雇用率を達成している企業の割合は48.0%と、法定雇用率を満たしていない企業は半数以上もあります。

なぜ、多くの企業で障害者雇用が進まないのでしょうか。今回は障害者雇用が進まない業界を5つピックアップし、原因や対処方法を解説していきます。

【参考】令和元年 障害者雇用状況の集計結果

障害者雇用が進まない5つの業界

障害者雇用状況を業界別の実雇用率(雇用されている障害者の割合)で示した下記グラフでは、「医療・福祉」(2.73%)、「生活関連サービス業・娯楽業」(2.32%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(2.25%)が法定雇用率を上回っています。

グラフ作成上、労働者数が10万人に満たない「農・林・漁業」(2.54%)は除かれていますが、法定雇用率を達成した業界の1つです。

【出典】令和元年 障害者雇用状況の集計結果

一方、実雇用率から見た場合に障害者雇用が進んでいない業界は以下の通りです。

・「教育・学習支援業」(1.69%)

・「情報通信業」(1.74%)

・「不動産業・物品賃貸業」(1.75%)

・「建設業」( 1.88%)

・「学術研究、専門・技術サービス業」(1.93%)

しかし、挙げた業界の中でも障害者雇用が進んでいる実例があるのも事実。障害者雇用にどのように向き合っているかを見ていきます。

障害者雇用が進まない原因①トップの決断力がない

障害者雇用が進まない原因の1つは、「トップの決断力がない」ということです。トップが障害者雇用を企業の経営方針として示すことで、社員の理解・共感が進みます。

例えば、学術研究、専門・技術サービス業界のある会計事務所では、トップ自ら、「必ずやるという意志を示すため、ビジョンとして経営企画書に記載して取り組んだ」といいます。

どんな企業でも、初めて障害者を受け入れる時は不安なものです。しかし、そこにトップの決断力があれば、障害者雇用が進まない業界でも障害者の雇用を成功させられます。同事務所で働く従業員210名のうち、5名が障害者です。

障害者人材は、顧客の年末調整や賃金台帳、決算書などの入力業務、各種資料の物販業務(受注、発送、管理)、会計・財務分析に関する資料作成補助などをし、年々仕事の範囲を広げています。

【参考】障害者雇用があまり進んでいない業種における雇用事例|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

障害者雇用が進まない原因②社内の理解がない

障害者雇用が進まない理由として、社内の理解が得られないことも挙げられます。前述したように、トップが社員に対し、障害者雇用を経営方針として伝えることで、社内の理解は進んでいきます。

しかし、ここでトップや幹部、採用担当者、受け入れ部署の担当者といった当事者だけに負担を与えない工夫が必要です。建設業界で総合工事業を営むある企業の例を紹介しましょう。

障害者採用の際に社内報で障害者雇用のメリットについて説明したり、地域の障害者職業センターから講師を招き、社内研修などを実施したりしました。

社内全体でサポートする姿勢を示すことで、受け入れ部署の不安を解消したほか、社内の理解も深まる結果となりました。同社では従業員247名のうち、4名の障害者が一緒に働いています。

障害者人材は、主に産業廃棄物管理表の作成や、社員の名刺作成業務をしています。施工管理に関わる資格や経験があるため、今後はそういった分野の業務に移行することも検討されています。

【参考】障害者雇用があまり進んでいない業種における雇用事例|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

障害者雇用が進まない原因③職務選定のノウハウがない

障害者の採用に当たって、採用担当者を悩ませるのは、「どんな職務についてもらうか」ということです。しかし、障害者の種類や程度だけで職務は決められません。障害者一人ひとりの障害状況や保有スキル、本人の希望など総合的な判断が求められます。

情報通信業界のある企業では、「できることを任せる」という方針です。少しでもできそうであれば、取り組ませてみる。やってみなければ仕事が合うか否かの判断はできないと考えています。

もともと社内のルールとして、「苦手なことはやらない」ということが決められている環境があり、障害者だからという理由で職務を決められることはありません。現在社員11名のうち、9名が障害者です。

障害者人材の1人は精神障害者で、SEとしてのスキルがあるためシステム開発を担当。苦手な顧客対応の工程は担当していないため、本人の能力が活かせる職務となっています。

障害者雇用すると決めたら、「できることから始めれば良い」、と同社の社長は述べています。障害者という先入観を持たずに、まずは実習などで受け入れ、実際に触れ合うことから始めてみるのも1つの方法です。

【参考】障害者雇用があまり進んでいない業種における雇用事例|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

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