心療内科の移行支援「リワークプログラム」とは?費用やメリット、事例など

心療内科の移行支援「リワークプログラム」とは?費用やメリット、事例など


心療内科などで行っている「リワークプログラム」をご存知でしょうか。

名称から仕事に関わることだと想像できるかもしれませんが、リワークプログラムとは精神障害者が職場復帰するためのプログラムで心療内科だけでなく様々な機関で受けることができます。

受講対象者や内容も様々で、精神的な疾患を抱えた人を始めとして、その家族や知人まで一緒に受けられるプログラムを実施している機関もあります。

今回は普段あまり聞き慣れないリワークプログラムについて、その概要から具体的な内容、そしてどの位の費用がかかるのかなどをご紹介します。

リワークプログラムの概要と対象者

リワークプログラムとは、うつ病や統合失調症を始めとした精神疾患により働けなくなった人を職場復帰させるための職業訓練のことです。

主にうつ病の方が受講するプログラムですが、症状が軽くなったり、自分の意志で何とか仕事を始めても再び休職や退職に至るケースが多いため、心だけでなく、体力づくりや生活環境の改善など多方面でアドバイスや治療を行い、職場復帰後に安定した就労を実現するためリハビリを行う必要があります。

リワークプログラムの受講要件は特に定められていませんので、精神障害者手帳は不要ですし、場合によっては会社の上司や家族、知人が一緒にプログラムを受講することもありますが、一般的には主に以下に当てはまる人が受講対象者となります。

  • うつ病と診断された人
  • 国際統計分類のICD-10による「精神および行動の障害」に該当する人
  • DSM-5によりうつ病と診断された人
  • その他精神疾患のある人

このプログラムは実施機関により名称が違うことがあり、「職場復帰支援」や「復職支援」と言うこともあります。

リワークプログラムのメリットと実施内容

リワークプログラムは単に職場復帰だけが目的やメリットではありません。

プログラムの内容は実施機関により異なりますが、プログラムの主なメリットと流れ、具体的な内容を見てみましょう。

≪リワークプログラムのメリット≫
  • 職場復帰と再休職の予防ができる
  • 就労に必要なスキルや知識を身に付けられる
  • 生活習慣の改善と安定した生活リズムの確立
  • 体調管理や症状の自己管理の方法を学べる
  • 体力の回復を図れる
  • コミュニケーション能力を高められる
  • ストレスの自己管理方法を学べる
  • 悩みを持った者同士の仲間が作れる
≪リワークプログラムの大まかな流れ≫
  1. 準備段階
    職場復帰を希望する本人と事業主、主治医の三者で話し合いを行い、復帰に向けた計画を立てる。
  2. プログラムの実施
    仕事に必要なスキル、生活リズムの改善、集中力の回復、体調管理や体力づくり、コミュニケーション力などを身に付けるプログラムを受講する。
  3. 再発防止のプログラム
    うつ病や統合失調症などの再発を防止するため知識を身に付け、円満な対人関係の作り方、ストレスや悩みの自己解決方法などを学ぶ。
  4. 職場復帰
    医師の診断を基に復帰か転職かを検討し、一定期間は様子を見る目的で出勤時間を考慮したり、短時間勤務を可能にするといった配慮が可能か、就労する事業者の責任者や人事と就労条件について話し合う。
  5. 復帰後のフォロー
    職場定着のため、必要に応じてフォローアッププログラム等に参加する。また、復帰した本人だけでなくジョブコーチ支援や産業医による支援など、事業主と支援機関によるフォローも行う。

プログラムの主な流れは以上の通りですが、特に「2.プログラムの実施」は実施する機関によって内容は様々です。

そのため、ここでは多くの医療機関で実施している主なリワークプログラムをご紹介します。

≪個人に関するプログラム≫
運動や体操で基礎体力を付け、集中力の回復、作業効率の向上を図るため、文字や数字を使った作業を行う
≪集団活動におけるプログラム≫
ソーシャルスキルトレーニング(SST)やグループミーティング、集団認知行動療法などを取り入れた対人技能の習得を目指す
≪心理的プログラム≫
休職理由の振り返りや生活習慣の改善を行い、並行して体調や精神の自己管理力などを身に付ける
≪ビジネススキルに関するプログラム≫
ビジネスマナーや資格取得に向けた勉強、本人への課題設定とその進捗報告をプレゼンするなどにより、仕事に必要なスキルを身に付ける
≪その他プログラム≫
上記に該当しない個人面談や趣味の共有などによる気分転換を図る

こちらのプログラムを見てお分かりになるかと思いますが、上記内容を1日で全て行うことはできませんし、プログラム自体は職場復帰を目指す本人の症状に合わせつつ、ゆっくり行わなければなりません。

ここでご紹介したプログラムは、1週間単位で時間割を決めたり、一定期間の定期通院により行うといった方法で実施されています。

プログラムが受講できる機関と費用

リワークプログラムが受講できる機関は複数に分かれており、有償と無償、民間と行政で分かれるため、ここではリワークプログラムを受講できる4つの機関とそれぞれの概要や費用についてご説明します。

地域障害者職業センター

事業主や主治医との話し合いにて支援計画を策定し、生活習慣の改善や軽作業の実施、体調などの自己管理方法を学びます。

就労する本人だけでなく、雇用する事業主へもアドバイスや職場定着支援を行うのが特徴です。

費用 無料
受講期間 3~4か月程度

医療機関

精神科のある病院にてリワークプログラムによる症状の改善と職場復帰、再発防止のための医学的なリハビリテーションを実施します。

費用 700~2000円/日(保険適用)
受講期間 3~6か月

就労支援事業所

就労に必要となるビジネスマナーやPCスキルなどの習得を行う通所型の施設です。

仕事に要する具体的なスキル習得や就職活動の支援を行っていることが多く、実際に復職した後も本人と事業主の間でフォローアップしながら再休職の防止を行うこともあります。

費用 無料~1200円/日(収入による)
受講期間 3~6か月

企業

勤務先となる企業が厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に基づいて作成する「職場復帰支援プログラム」によるリワークプログラムです。

職場復帰までの流れや就労にあたっての配慮、管理責任者による労務管理等が定められています。

費用 無料(企業負担)
受講期間 特に目安無し

※全ての企業が実施しているものではありません。

実際に職場復帰を果たした人の事例

それぞれの機関でプログラム内容や費用、プログラムの実施期間などが違うため、まだ具体的なイメージが湧かない方もいるかもしれません。

そこで最後に、リワークプログラムを受講して実際に職場復帰した人の事例を一つご紹介します。

リワークプログラムで職場復帰した事例≫

30代男性のAさんは仕事熱心な性格で、社内でも優秀な社員でした。

しかし、転勤を機に今までと違う労働環境に置かれたことで、うつ病と判断されてしまいます。

理由は通勤時間が長くなったことや、必要なスキルの習得や新しい顧客への対応が必要になったことによる業務成績の伸び悩み、そして寝つきの悪さや寝汗、抜けない疲労感、不安感や焦燥感を覚えるようになったためです。

Aさんは処方された薬を飲みつつ1か月ほど仕事を続けましたが、結局症状は改善することなく休職に至りました。

休職後、3か月ほどすると症状が大きく緩和されたため、産業医の提案により、地域障害者職業センターの「職場復帰支援事業」を利用して職場復帰に向けての準備を始めます。

地域障害者職業センターへ週5日、計3か月間通い、受講したリワークプログラムにより以下のような効果がありました。

  • ストレス解消法や認知行動療法等を学んで様々な気づきを得た
  • 同じ理由で休業する人と話す機会があった
  • 精神面で不調になった原因を職業カウンセラーの話から知ることができた

プログラムの修了後、産業医や人事担当、直属の上司との間で職場復帰に向けて、以下の「職場復帰支援プラン」を作成しました。

職場復帰後2週目まで 4時間勤務(内勤のみ)
職場復帰後3週目以降 6時間勤務(内勤のみ)
職場復帰後2か月目以降 8時間勤務(内勤のみ)
職場復帰後3か月目以降 所定労働時間内で営業の同行
職場復帰後4か月目以降 所定労働時間内で担当地区内を一人で営業

上記とは別に、月一度の産業医との面接と隔週で保健師の面接を実施しました。

その結果、復帰後6か月経過しても特に問題なかったため、通常業務に戻しつつ、検診などによりフォローを行っているとのことです。

【出典】厚生労働省 中央労働災害防止協会「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

まとめ

職場復帰の支援を行っている機関は様々です。国も精神障害者の職場復帰支援を推進しており、地域障害者職業センターなどの支援を受けながら安定した就労を行う企業には、障害者職場復帰支援助成金の給付も行っています。

全ての企業が職場復帰支援プログラムを策定している訳ではありませんが、産業医などを置く企業では職場復帰支援プログラムが作成されている場合が多いとされています。

そのため休業中の方でなくとも、仕事の悩みや忙しさから現時点で休職を検討している場合は、一度、勤務する会社に職場復帰支援プログラムがあるか確認してみることをお勧めします。

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