障害者手帳の曖昧な種類の違いと仕組みを詳しく解説

障害者手帳の曖昧な種類の違いと仕組みを詳しく解説

障害を持つ方が所持する「障害者手帳」ですが、実はその発行基準や受けられる福祉サービスが、住んでいる地域によってバラバラなのをご存知でしょうか。

法律によって障害者手帳を発行する目的やその役割の根拠は示されていますが、関係法令が複雑に絡み合っている上、基本的に発行ルール等は都道府県や市区町村任せになっている状況なのです。

何かと難しい解釈が求められる障害者手帳の制度ですが、具体的にどういった法律に基づき、何の目的で発行されるのか、また法律の不備が原因とも言える障害者手帳にまつわる差別的な扱いやトラブル事例等も合わせてご紹介します。

障害者手帳とは?種類と概要

障害者手帳の種類には「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保険福祉手帳」の3つがあります。

【出典】東京都福祉保健局/町田市

続いて各障害者手帳の役割について解説します。

身体障害者手帳とは…
身体障害者福祉法-第15条の定めにより、身体障害者の保護、生活支援、自立、社会活動への参加を促進するため、身体に不自由がある者としての証明、各種福祉サービスを受ける際に提示するものとして発行される手帳。
療育手帳とは…
知的障害者の保護や自立支援を図り、各種福祉サービスを受ける際に提示するものとして発行される手帳。発行に際して特に法的根拠はなく、厚生労働省の通知により都道府県が発行するため、地域により呼び名が違うことがある。(例:東京都「愛の手帳」)
精神障害者保健福祉手帳とは…
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律-第45条に基づき、精神障害の状態であることを認定し、精神障害者の社会復帰や参加、自立支援の促進を図る、各種福祉サービスを受ける際に提示するものとして発行される手帳。なお、身体障害者手帳と療育手帳とは違い、厚生労働省の通知により有効期限2年後の更新が必要と定められている。

どの手帳も共通して障害者本人が社会活動に参加するための支援や保護を目的としており、また、各種福祉サービスを受けるために必要な証明書という点で共通しています。

一見してどの手帳も法的根拠に基づいて各ルールや役割が統一されているように思えますが、実はそうとも言えません。3つの手帳の扱いや発行基準は地域によってバラバラなのです。

都道府県により障害者手帳の扱いが異なる理由

障害者手帳には3つの種類だけでなく、都道府県によって以下のような違いがあります。

  • 色や形状
  • 手帳の名称
  • 申請方法
  • 発行基準
  • 受けられる福祉サービス

障害の特徴や症状に合わせて交付目的や発行規則は変えるのが望ましい形かもしれませんが、せめて名称や色くらいは統一してもらいたいと思う方も少なくないでしょう。

では、なぜ障害者手帳はここまで統一性が無いのでしょうか。

その理由は、法が定める障害者の定義や障害者手帳の発行に関する法的根拠を知ると分かります。

【身体障害者手帳の発行に関する法的根拠】
関係法令 身体障害者福祉法
根拠条文 第15条:身体に障害のある者は、都道府県知事の定める医師の診断書を添えて、居住する都道府県知事に身体障害者手帳の交付を申請することができる。
補足内容 第4条:身体障害者とは、身体上の障害がある18歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた者
【療育手帳の発行に関する法的根拠】
関係法令 知的障害者福祉法
根拠条文 なし
補足内容
厚生省発児156号「療育手帳制度について」
第1:この制度は、知的障害者に対して一貫した指導・相談を行うとともに、これらの者に対する各種の援助措置を受け易くするため、知的障害者に手帳を交付し、もって知的障害者の福祉の増進に資することを目的とする
第4-4:手帳の名称は「療育手帳」とする
厚生省児発725号「療育手帳制度の実施について」
第2-1:手帳の名称は「療育手帳」とするが、別名を併記することは差し支えない

【出典】厚生労働省「療育手帳制度について」 / 厚生労働省「療育手帳制度の実施について」

【精神障害者保健福祉手帳の発行に関する法的根拠】
関係法令 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
根拠条文 第45条:精神障害者は、厚生労働省令で定める書類を添えて、居住する都道府県知事に精神障害者保健福祉手帳の交付を申請することができる。
補足内容 障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則:精神障害がある者は、(中略)精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者であって、症状が安定し、就労が可能な状態にある者とする

【出典】厚生労働省「障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則」

このように障害の別による法律があるにも関わらず、手帳について定めたものもあれば、通知、通達などで障害者手帳の発行や規則を補完しているものもあります。

つまり、どの手帳も発行の根拠が曖昧であったり、条文や規則が複雑に絡み合っている状態なのです。

特に療育手帳は「都道府県が交付する」としつつ、強制力がない通知によって発行されている状況です。更にその通知では「手帳の名称は療育手帳でなくても良い」としていますので、統一性のない理由がよくわかります。

精神障害者福祉手帳ではサービスを受けづらい

さて、障害者手帳の内容はバラバラですが、実際には各自治体がしっかり手帳を発行してくれますし、企業や各団体が協力しあって障害者への優遇サービスを提供しています。

「それなら法律が少しくらい曖昧でも…」と思われるかも知れませんが、残念なことに、障害者手帳の統一性の無さが結果的として企業や団体が実施する福祉サービスの違いを生んでいるとも言えます。

主なところでは、JRなどの公共交通機関の多くが精神障害者だけを割引対象としていないことです。

JRは「国の政策として行うべき」という姿勢であることが割引サービスから精神障害者を除外している理由とされていますが、確かに内閣府の「第14回 障害者政策委員会議事録」でもJRの代表者がそのように述べています。

【参考】障害者政策委員会「障害者政策委員会(第14回)議事録 1」

こういった状況に疑問を呈する人は多く、「差別ではないか?」という意見も数多く上がっています。

例えば以下のブログでは、精神障害者だけが割引などの優遇サービスを受けられない理由について、実際に問い合わせた記録を綴っています。

【参考】JRと国に精神障害者福祉手帳で割引しない理由を電話で聞いてみた

このブログではJRと自治体の双方に問い合わせしていますが、それぞれの回答を要約すると、国もJR側も自分たちが決めるべきものではないという見解です。

両者で見解が違うのは理解できますが、いまいち釈然としない方も多いのではないでしょうか。

制度改革が必要?障害者手帳のトラブル事例

ここまで法的な根拠という視点で障害者手帳の仕組みや制度を解説いたしましたが、先述の公共交通機関を始めとして、障害者手帳に関するトラブルや差別事例は数多くあります。

その一例として、内閣府の「合理的配慮サーチ」で紹介されている、障害者手帳に関するトラブルや差別事例をご紹介します。

  • バスで手帳を提示し、割引を受け払うことに少し時間がかかり、運転手にイヤな態度をとられた。
  • タクシーを利用したとき障害者手帳による割引が使えたり使えなかったりした。
  • 主治医が障害者制度を知らず「手帳、年金」がなかなかもらえなかった。
  • (バスに乗る際)手帳を出すのが遅いと言われたり、手帳を出したとたん、あからさまに面倒くさそうな表情になったり、半額にしてくれなかったり。
  • (福祉課の窓口で) 障害者手帳を申請に行った際、4級なんて受けても何も恩恵がないと云われました。
  • タクシーに乗った時に障害者手帳をいただいているというと、返事をしない運転手さんがいる。
  • バスを利用するとき、障害者手帳を出して料金を支払うと、運転手さんにいやな顔された。
  • バスに乗って療育手帳出だすと、チェ、と舌打する運転手や、迷惑そうな態度をとる運転手いて、イヤな気持ちになる

【引用】合理的配慮サーチ

他にも多くの事例がありますが、総じて「タクシー」や「バス」という交通機関でのトラブルや差別事例が多く見受けられました。

上記の事例で驚かされるのは、主治医が障害者制度を知らなかったことや、役所の福祉課で障害者手帳に恩恵が無いという話をされたケースです。

障害者手帳というのは「障害者であるという証明書」であり、「障害者の社会活動の促進や一般の人と同じレベルの生活を送るための福祉サービスを受けるためのもの」と定められています。

上記の事例を見る限り、障害者手帳の法的不備の解消と制度改革が必要であり、同時に社会全体がその必要性や目的の理解を深めることも重要だと言えるでしょう。

まとめ

今回は障害者手帳に関して、法律やルールを主とした仕組みを解説いたしました。

手帳に関してだけでなく、障害者関連の法律というのは曖昧な条文があったり、各法令との繋がりが極めて複雑になっていたりというのが現状です。

つまり、障害の無い一般の方だったとしても、障害者関連の法律やルールを調べるにあたって、かなりの時間と労力を要することになるのです。

障害者のための法律であるはずが、障害者がその法律やルールを理解することに相当の困難を要する状況というのは、ノーマライゼーションや合理的配慮などに反するものと言われても仕方ないかもしれません。

交通機関の割引について「誰が決める」と話し合っている場合ではなく、「そもそも障害者福祉の必要性という根本を忘れていないか」という思いすら抱かせるのが、日本の障害者福祉における現状なのです。

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