障害者の就職件数が過去最高!雇用率が年々増加している理由

障害者の就職件数が過去最高!雇用率が年々増加している理由

ニュースや障害者関連のメディアでも話題になった「障害者の就職率」。年々増加し続ける障害者の就職率は、企業と障害者にとって明るい未来を予感させます。

「でも、障害者が就職したら、どんな仕事内容になるの?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、なぜ障害者の就職率が上がっているのか、そして企業が障害者雇用を失敗しないために何が必要かを解説しつつ、障害者の就職率推移と実際に就職した障害者の仕事内容をご紹介します。

障害者の就職率が過去最高を更新し続けるワケ

2019年6月に厚生労働省が公表した資料によると、2018年の身体、知的、精神障害者の就職件数は10万2,318件。前年より4,504件増加(4.6%増)し、就職率も48.4%と10年連続で増加し続けています。

【参考】平成30年度 障害者の職業紹介状況等 | 厚生労働省

障害者の就職件数や就職率が増加し続けているのは、一般的に以下のような理由と言われています。

・障害者雇用促進法における法定雇用率の上昇
・障害者雇用の認知が広まった
・企業によるダイバーシティやCSRの取り組み推進
・障害者による労働需要の増加
・特例子会社の増加

何か1つのキッカケで急に増加したのではなく、障害者雇用の社会全体の認知と取り組みがあってこそ障害者の就職が促進されている状況です。

特に重要と言えるのは企業の障害者雇用に対する姿勢の変化ですが、具体的にどのような変化があるのか見てみましょう。

障害者の仕事を支援する「特例子会社」や「在宅ワーク」も増加

特例子会社は、一定要件の基で障害者への特別な配慮がなされた事業所として設立される企業の子会社で、障害者雇用を促進する起爆剤になったと言われています。

事実、特例子会社の数も年々増加しており、2019年時点で既に517社もある状況です。

また、2006年に障害者雇用促進法が改正され、「在宅就業障害者支援制度」が創設されました。

在宅で働く障害者を支援する団体を通して業務を発注した場合、発注した会社に特例調整金が支払われるという制度です。

就職率に大きく貢献したというデータはありませんが、昨今は在宅就業障害者支援制度を活用して在宅ワークを導入する企業も増加傾向にあります。

通勤で体力を消耗しすぎてしまう障害者も多く、在宅ワークは障害者の就職率増加の一翼を担う大事な制度と言えます。

いずれにせよ企業の障害者雇用に対する意識や取り組みの変化は、障害者の就職率増加に大きく寄与しているのは間違いないと言えるでしょう。

【出典】第82回 労働政策審議会 (障害者雇用分科会) | 厚生労働省

障害者の職種別の就職件数ランキング

障害者雇用を検討している企業や担当者にとって、「障害者を雇用したらどんな仕事をしてもらうか」は一つの課題と言えます。

障害者の就職率が上がっているとはいえ、就職した障害者は具体的にどんな仕事内容や職種で活躍しているのでしょうか。

一般的に障害者の任される仕事は体調が悪くなっても替えが利く簡単な事務作業が多いと言われますが、必ずしも障害者の仕事内容が事務ばかりとは言えません。

【参考】平成30年度 障害者の職業紹介状況等 | 厚生労働省

上記グラフは厚生労働省で調査している職種別の就職件数で、全体として最も就職件数の多いのが「運搬・清掃・梱包」といった職種となっています。

次いで「事務」「サービス」「生産」と続いており、「障害者雇用=事務作業」とは必ずしも言えないというのがお分かりいただけると思います。

では、各職業に就職した障害者は具体的にどんな仕事をしているのでしょうか。

以下にご紹介するのは、厚生労働省による全面バックアップにより運営されている障害者雇用情報のポータルサイト「ATARIMAEプロジェクト」。

1012社で行われた障害者雇用を業種別に分け、それぞれの業種で障害者がどんな仕事内容で働いているかを確認できます。

具体的な仕事内容が非常に多くまとめられていますので、是非一度はご覧いただくことをおすすめします。

【参考】ATARIMAEプロジェクト 業種別雇用事例・1012社

【障害者アンケート調査】直近の仕事で退職に至った理由・経緯

障害者の就職率は上がっていますが、離職率が高いのも事実。雇用してもすぐに退職してしまう障害者に対し、一部では「障害者雇用は企業にとって負担だ…」との声もありますが、果たして本当にそう言えるでしょうか。

確かに一般的に就職した障害者の3~5割は1年以内に辞めてしまうと言われており、厚生労働省のまとめた「障害者の平均勤続年数」というデータでも精神障害者の勤続年数だけ短いというデータもあります。

【参考】第82回 労働政策審議会 (障害者雇用分科会) | 厚生労働省

身体障害者と精神障害者の平均勤続年数は倍の差があります。法改正などにより精神障害者の雇用が促進されるようになって日も浅いこともあり、精神障害者を雇用した企業の配慮がまだ浸透していないのかもしれません。

では、障害のある労働者は何を理由に退職するのか、当サイトでは障害者を対象に「直近で辞めることを決めた仕事について、退職に至った理由・経緯を教えてください。」というアンケート調査を実施し、以下のような回答がありました。

・A型作業所ですが、吸収合併され事業所の環境が一変し、もともとの職員が半数やめて雰囲気が暗くなり、自分がそれに対応できなかった為
・ほぼ一日中、客に罵倒され人間不信になった為
・システム障害で夜も土日も寝られない状態が半年以上続いた。また、社内の利害調整で対人面のストレスが強い状態が続いた
・人間関係が続かない
・作業内容が自分自身に合わなかった/会社の方針が突然変わってしまった
・マネージャー、社員は自分の事を理解していたがまわりのアルバイト、パートの人がそれを理解できず、こりつしたため
・うつ病に対する職場の理解が無く、不当に自主退職をせまられ、退職。
・半年間にわたる閑職にさらされ、適応障害を発したため。

会社の廃業や症状の悪化、個人的な事情なども前職の退職理由と回答された方もいましたが、多くは「会社側の配慮不足」や「パワハラ」が退職理由。障害者雇用を考える企業は「障害者は仕事ができない」「障害者雇用は負担」とは言っていられない状況です。

障害者雇用を促進する国や自治体はこれまで様々な施策や支援制度を導入してきましたが、同時に企業の配慮不足や支援機関に頼らず独自に雇用したため、就職した障害者がすぐに退職するケースも多いと言われています。

障害者の就職率が年々増加する今、企業が障害者に安定して就労してもらうために利用できる支援機関を積極的に利用することは、半ば企業の義務と言えるのかもしれません。

精神障害者の仕事内容については、以下記事にて詳しく解説しています。

精神障害者の仕事内容は?障害者枠採用でどんな仕事をするの?

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