新認定された「ゲーム障害」の特徴や治療方法等。認定で何が変わった?

新認定された「ゲーム障害」の特徴や治療方法等。認定で何が変わった?


「ゲーム障害」という疾病が正式に認定されるのをご存知でしょうか。

ゲームに没頭することで依存性が起こる病気で、世間では「ゲーム依存」と呼ばれていたりもしますが、実は名称が混在しているのにも理由があります。

この記事では、世界保健機構WHOにより新しく認定されたゲーム障害の特徴や治療方法、またゲーム障害の認定による日本での影響などを解説します。

世界保健機構WHOにも認定された「ゲーム障害」とは?

ゲーム障害とは、世界保健機関「WHO」が正式に認めたテレビゲームやオンラインゲームに異常なまでに依存してしまう精神疾患です。

パソコンやインターネット、スマートフォンが普及したことで、ゲーム依存が深刻化し、良くないことと分かっていても長時間継続してゲームを続けてしまうのが特徴です。

WHOが明らかにしたゲーム障害の症状は以下の通りです。

  • ゲームをする時間や頻度が自分で制御できない
  • 日常生活よりもゲームを最優先にしてしまう
  • 状況が悪化しているのにゲームを続ける、またはエスカレートしてしまう

上記に続けて、「個人、家族、社会、教育、職業、またはその他の重要な分野に大きな悪影響を及ぼすほど深刻である」とも記されています。

WHOは2019年5月にICD-11という国際疾病分類においてゲーム障害を正式認定。現代ならではの障害として、多くのメディアがこぞって取り上げました。

【参考】ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics/Gaming disorder

ゲーム障害をWHOが認定した経緯

そもそもICD-11は、疾病を分類して統計データを取ったり、診斷基準を提示したりするためにWHOが作成する国際的な基準です。

つまり、医師が治療の参考とするマニュアルのようなものと言えるでしょう。なお、「11」はICDというマニュアルのバージョンと考えていただければよいでしょう。

では、WHOがゲーム障害をICD-11に盛り込んだのは何故でしょうか。

実はWHOがゲーム障害を正式に認定した裏には、日本の医師が深く関わっています。

ICD-11にゲーム障害が盛り込まれることになった仕掛け人が、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターの樋口進院長。日本で最初に「インターネット依存外来」を立ち上げた人物です。

2013年、WHOの総会に参加した樋口氏。なんとWHOの担当者へ直接交渉して「インターネット依存に関する記述を入れるべき」と伝えました。

当然、門前払いのような状況だったそうですが、何とか食い下がった樋口氏は、東京、韓国、香港で行われたインターネット依存に関する会議で座長を務めるに至ります。

そしてついに、2017年に発表されたICD-11の草案に「ゲーム依存」が盛り込まれることになったのです。現在、ゲーム依存は「ゲーム障害」という名で広まっています。

ただその背景には、日本人による「インターネット依存を正式な疾病として認めるように」という活動があったのです。

実例!ゲーム障害を患った人たちと日本における変化

WHOが正式認定したゲーム障害。ICD-11においてゲーム障害と認められるには最初にご紹介した症状が「12か月以上続く場合」とされています。

さすがに1年以上も日常生活を顧みずゲームをやり続ければ、それが一種の障害であると診断されても不思議ではなさそうです。

「たかがゲームで…」と思われるかもしれませんが、実は世界では死亡例もあります。具体的にどのような事例があるか見てみましょう。

韓国 86時間ゲームをやり続けた男性が極度の疲労により死亡
中国 ゲームに熱中しすぎた兵士が軍事演習の警報に気づかなかった
韓国 インターネットカフェに入り浸っていた夫婦が娘を餓死させた
アメリカ ゲームに熱中するあまり娘を餓死させた
アメリカ ゲーム大会で負けたことに腹を立てた男が銃を乱射
日本 元農林水産省次官がゲーム依存の息子を殺害
日本 ゲームの為に借りたお金を返すために老夫婦を殺害して金銭を強奪

上記は報告されている実例のごく一部。ゲーム障害は本人だけでなく、家族や他人をも巻き込む深刻な疾病であるのが分かります。

時には全く無関係の人にも危害を加える可能性がある非常に恐ろしい病気であると言えるでしょう。

既に韓国では時間帯によりゲームが強制シャットダウンされるなどの対策が取られています。

日本でもゲーム障害は深刻に受け止められているため、ゲーム障害の認定により何らかの規制が入る可能性は否めません。

ゲーム障害を回復させる治療方法

ではゲーム障害を患ったら、患者に回復の見込みはあるのでしょうか。

本人は既にゲームに依存してしまっていますので、本人自身で意識的に対処するのは難しいでしょう。するとどうしても家族や周りの方のサポートが必要です。

多くのメディアでは荒療治になりかねない対策も述べられていますが、具体的にどんな方法が有効か見てみましょう。

  • 最初からゲーム機自体を買わない、もしくはリビングに置く
  • 既にゲームに依存しているなら早期に医療機関に相談する
  • 親戚や知人、本人の友人などに外出のキッカケを作る協力をしてもらう
  • 本人との話し合いの場を多く作る
  • 家族全員でオフラインの時間を作る

心配のあまり、ゲームに熱中する本人からゲームを取り上げるのは逆効果だと言われています。

ゲーム依存者は家庭や仕事で問題を抱えているケースも多く、特にオンラインゲームは勝敗などによって実在する人から祝福されるシーンが多いため、承認欲求が高まるのもゲーム障害の引き金になりがちと言われています。

厚生労働省も今回ゲーム障害がICD-11に盛り込まれることを受け、対応の検討に入っていますが、先述した「インターネット依存外来」の数はまだまだ少ないのが現状です。

もし家族や身近にゲーム障害の可能性や依存性が高くなっている人がいるなら、早めの対処するのが最善策と言えるでしょう。

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