精神障害者の合理的配慮事項ランキング10選

精神障害者の合理的配慮事項ランキング10選

障害者雇用促進法の第36条の3、障害者差別解消法第8条では、障害者の雇用にあたり「合理的配慮を行うこと」と定められています。合理的配慮という言葉を知っていても、具体的にどんなことが合理的配慮になるのか知らない方もいるでしょう。

合理的配慮には障害や状況に応じた様々な手段が講じられていますが、一見健常者と変わらない精神障害者の場合、会社が合理的配慮と思っていてもポイントがずれていたりするケースがあるのも事実です。

そこでこの記事では、企業が精神障害者に対してどのような合理的配慮を行っているのかランキング形式でご紹介します。

それぞれの合理的配慮の具体的な内容なども解説しますので、精神障害者雇用を考える企業担当者様はぜひ参考していただければ幸いです。

精神障害者の合理的配慮事項ランキング

精神障害者に対する合理的配慮は様々な方法やシーンが考えられますが、企業は精神障害者に対してどのような合理的配慮を行っているのでしょうか。

まず厚生労働省の「障害者雇用実態調査」で公表されている、企業が精神障害者に対して行っている合理的配慮ランキングをご覧ください。

【参考】平成30年度障害者雇用実態調査 – 厚生労働省

合理的配慮は障害に応じて、労務や業務内容などの「ソフト面」、設備や業務機器などの物理的な配慮を行う「ハード面」に分けられますが、精神障害者に行われている合理的配慮は「ソフト面」が多いようです。

では、実際に行われている合理的配慮が具体的にどのような内容の施策なのかランキング順に解説していきます。

【1位】短時間勤務等勤務時間の配慮

精神障害者の多くは、週の勤務時間が30時間未満という人が多くいます。1日6時間未満ということになりますが、理由は精神障害の症状に対する合理的配慮が行われているためです。

・精神障害者は疲れやすい傾向にある
・メンタル面の障害により通常時間の労働では業務遂行が難しかったりする
・仕事に慣れるまで短時間労働にして徐々に勤務時間を伸ばしている
etc…

障害者雇用を進める会社の多くは、最初は短時間労働で働いてもらい、本人の意向により徐々に勤務時間を伸ばしていくという合理的配慮を行っていることが多いと言われています。本人の意向を聞き、最適な勤務時間を設定するようにしましょう。

【2位】通院・服薬管理等雇用管理上の配慮

「通院・服薬等雇用管理」とは、障害による通院や服薬のために時間を猶予する配慮です。精神障害に限りませんが、通院が必要な時はどうしても通常の時間での出勤が難しくなります。

また、服薬も薬を飲めば良いというわけではなく、落ち着ける場所で服薬したいというケースもあったりします。そのため通院や服薬が必要な日は、出勤や休暇、休憩場所などについて柔軟な対応が必要です。

【3位】休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認めるなど休養への配慮

精神障害者は、職場環境や業務中の状況によって不安を感じたり急激に緊張が高まってしまったりすることがあります。そのため、通院や服薬の有無に限らず、休養や休憩は本人の意向に合わせた柔軟な対応が必要です。

・気兼ねなく休暇申請できる雰囲気づくり
・体調が変化したらすぐに休憩できる柔軟な対応
・本人が抜けても作業が滞らないようにするバックアップ体制
etc…

自分が作業から抜ける自責により、本人が気に病んでしまうケースがあります。休憩の取りやすさとは、自分がいなくても作業が続行される体制づくりと考えてもよいでしょう。

また、真面目な性格の人だと過集中になりやすかったりします。本人からの申告を待つのではなく、管理者から休憩を取るよう促す配慮も必要となるでしょう。できれば人が大勢いる食堂や談話室ではなく、横になれるベッドなどがある静かな場所を用意したいところです。

【4位】配置転換等人事管理面についての配慮

障害者雇用では、障害の特性に合わせた配置転換などの人事が行われます。例えば、それまで営業職だったとしても障害に罹患したため事務職を担ってもらうなどです。

しかしながら、配置転換は場合によって差別と捉えられかねません。過去、障害を理由に配置転換を行ったことで裁判になったケースもあります。

本人と十分に話し合うのはもちろん、医師の診断と支援機関の助言を基にした配置転換をすることが正しい合理的配慮と言えるでしょう。

【5位】能力が発揮できる仕事への配置

配置転換は単に精神障害者でもできる仕事を与えるためだけに行うのではなく、「精神障害の特性に応じて本人の能力を最大限発揮できる配置」であることが大事です。障害の特性といっても色々なパターンがあります。

・コミュニケーション能力に難があるが、細かい作業には人並み以上の能力を発揮する
・通勤で体力を消耗して会社に着くころに正常な思考ができなくなるが、在宅なら落ち着いて作業できる
・周囲の音や気配に敏感で集中力が途切れがちだが、人のいないところだと高い能力を発揮する
etc…

「精神障害者でもできる仕事」ではなく、「障害の特性を考慮すれば高いパフォーマンスを発揮できる仕事」という視点で配置を考えるのが正しい合理的配慮と言えるでしょう。

【6位】業務実施方法についてのわかりやすい指示

精神障害者の多くは、マルチタスクが苦手だったり曖昧な指示にストレスを感じやすかったりします。また業務上で必要になる応用や工夫も得意ではありません。そのため業務指示や実施方法は、分かりやすく簡潔である必要があります。

例えば、作業手順をマニュアル化したり作業完了の目安を決めたりといった配慮が有効です。また説明しっぱなしにするのではなく、本人が理解したか確認してから仕事に就いてもらうようにしたほうが良いでしょう。

【7位】職場内における健康管理等の相談支援体制の確保

障害者雇用では「相談窓口の設置」も大事になります。業務内容や休暇などへの配慮はもちろん、長く勤めてもらうためには相談できる相手がいるかどうかは重要なポイントです。

定着支援のためには専門の支援機関へ相談できますが、健康管理面では体調変化をすぐに申告できるように直属の上司や障害者雇用の担当者が障害への理解を深めることが欠かせません。医療機関との連携も検討したほうが良いでしょう。

相談しにくい内容を気軽に言えるよう、相談内容を書いた紙を投函できる箱を設置するといった合理的配慮を行う会社もあります。

【8位】工程の単純化等職務内容の配慮

6位の業務指示や作業内容を分かりやすく伝えることの大事さに加え、できれば「作業工程を簡素化」する合理的配慮も行いたいところです。

・最初は作業量を少なくして慣れに応じて徐々に業務を増やす
・一連の作業を細切れにして一つ一つの業務を簡素化
・一つの業務の中に異なる種類の作業を混ぜないようにする
・必要なツールや機械はできるだけ少なくする
etc…

最初は単純作業であっても徐々に慣れてくれば他の作業を任せられるようになります。生産性をアップさせるためには、作業工程の単純化と明確なマニュアル化は必須として考えておきましょう。

【9位】関係機関等、外部機関との連携支援体制の確保

障害者雇用で頼れる支援機関は様々な種類があります。就労前から雇用後におけるまで、精神障害者本人が安定して就労できるようにするため、会社は独自の方法ではなく専門機関との連携が求められます。

・就労支援施設やハローワークによる障害者雇用の斡旋、レクチャー
・障害者就業・生活支援センターや地域障害者職業センターによる定着支援
・その他医療機関や産業医など
etc…

ランキングを見る限り、関係機関と連携している企業は多くなさそうです。障害者雇用におけるトラブルの未然防止や定着率のアップなど、関係機関との連携はメリットが多くあります。関係機関との連携は、本人と会社がwinwinの関係を築く大切な合理的配慮であることを忘れないようにしましょう。

【10位】業務遂行を援助する者の配置

「業務遂行を援助する人の配置」もランキングでは低い位置にありますが、実は大事な合理的配慮です。障害者雇用は社内全体で理解を深める必要があります。

ただ、精神障害者本人が感じている業務や職場における問題や課題を互いに認識するためには、専門の担当者を配置したほうが良いでしょう。いくら会社が合理的配慮を行ったとしても、それが本人にとって有効であるとは限りません。

・身近にいる先輩社員
・担当部署の上司
・障害者雇用の人事担当
・就業する部署の責任者
・その他支援機関の職員
etc…

精神障害者本人が業務をスムーズに行えるよう、相談や業務指示に対して細やかな配慮を行える担当者は決めておいた方が良いでしょう。

まとめ

今回、精神障害者に対する10の合理的配慮事例をご紹介しましたが、高齢・障害・求職者雇用支援機構の障害者雇用事例リファレンスサービスでは、合理的配慮の実際の内容や経緯をレポートとしてまとめています。

障害種別、業種、会社規模などで絞り込んで検索ができますので、合理的配慮の具体的な参考として是非ご活用ください。

■障害者雇用事例リファレンスサービス
https://www.ref.jeed.or.jp/

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