精神障害者を採用予定の企業は知っておきたい障害別の得意・不得意一覧

精神障害者を採用予定の企業は知っておきたい障害別の得意・不得意一覧


障害者雇用率は年々上がってきていますが、2018年4月1日から新たに雇用率に加わることになった精神障害者の雇用率も大幅に伸びてきています。

精神障害の種類は、アルコールや薬物による「外因性障害」と主に精神的ストレスが原因となる「心因性障害」、そして未だ原因がはっきりしない「内因性障害」の大きく分けて3つがあります。

外因性や心因性は比較的に治療方法が確立しているとも言えますが、内因性障害は原因すらはっきりしない疾患も多くあります。

そこでこの記事では、主にうつ病、躁うつ病(双極性障害)を始めとした内因性障害と発達障害について、障害別の得意・不得意を症状や治療法も併せてご紹介します。

統合失調症

「統合失調症」とは幻覚や妄想、意欲の低下などが要因となって、日常生活に支障をきたす障害を指します。

目の前で起きた出来事に対して妄想と現実、過去と現在の区別などが自分の頭で整理できないといった状態になります。

原因 統合失調症になる原因は未だはっきりしていませんが、今まではストレスや生活環境などの外的要因で発症すると言われていました。

現在では、遺伝子的な要因ではないかという説が主流になりつつあります。

治療 症状に応じて「薬物療法」と「心理社会的療法(リハビリ)」の2つが用いられます。

幻覚・妄想などの陽性症状が表れた際は薬物療法、意欲の低下など陰性症状が表れた際は心理社会的治療という方法が主に用いられます。

現在は副作用がなく陽性、陰性どちらにも効果のある新薬が開発されています。

得意 ・マニュアルなどでやる事が決まっている作業
・緊急性を伴わない作業
・対人関係を重要としない作業
・細分化され一つ一つが短時間で終われる作業
不得意 ・繊細さが求められる細かい作業
・複数同時のマルチタスク
・臨機応変な対応
・緊張を伴う新しい作業

うつ病・躁うつ病

一般的に言われるうつ病は、「うつ病」と「躁うつ病」で大別されます。

うつ病は気分の落ち込みや意欲の低下、食欲減退や不眠といったマイナス症状のみが表れる疾患で、躁うつ病(双極性障害)はうつ病の症状と合わせて、高揚感や気分がハイになる躁(そう)状態の両方が表れる疾患です。

原因 うつ病の原因は生活環境や対人関係のストレスといった環境的な要因と、極度の疲労やホルモンバランスなど身体的な要因に分かれます。

対する躁うつ病の原因は解明されておらず、遺伝や脳の働きが主な要因だとされています。

もともと躁うつ病の傾向があり、うつ病の原因となる環境要因や身体的要因が引き金となって発症するケースもあります。

治療 うつ病も躁うつ病も「薬物治療」と「心理療法」の2つが主流です。

うつ病に関しては「抗うつ薬」、躁うつ病は「抗精神病薬」などを併用します。

症状によって処方する薬の見極めが難しいため、薬物治療と心理療法を併用するケースが多いのが現状です。

得意 (うつ病)
・ルーティン化された単純な作業
・自分以外の代わりがいる作業
(躁うつ病)
・時間のゆとりがある作業
・気軽に休める環境のある作業
不得意 (うつ病)
・体力が求められる作業
・多くの人と関わること
・長時間に及ぶ作業
(躁うつ病)
・長時間の作業
・趣味や好きなことを活かせる作業
補足 うつ病と躁うつ病は「気分障害」として分類されている疾患です。

気分の上下が主な症状のため、疾患による得意・不得意が明確に存在しません。

あくまで個人による得手不得手があるものと考えたほうが良いでしょう。

ASD(自閉症スペクトラム障害)

発達障害の一種である「ASD(自閉スペクトラム障害)」は、アスペルガー症候群や自閉症などを総合した一つの障害を指す疾患です。

以前まで細かく分類されていた疾患は、重複する症状が多く線引きが難しいとの理由でASDとしてまとめられました。

ASDの症状は、対人関係において空気を読めない、コミュニケーションスキルが極端に低い、自分の興味ある範囲が極端に偏っているという3つが主となっています。

原因 ASDは遺伝子や脳の働きが要因である先天性疾患であるため、外的要因により「ASDになる」ということはありません。

ASDのほとんどは遺伝子が要因であるという研究結果もありますが、未だはっきりした原因は掴めていないのが現状です。

治療 ASDは先天性の疾患ですが、障害や病気というより個性として捉えるのが一般的な認識です。

協調性の向上に効果があるとされる点鼻薬の研究も進められていますが、基本的に治療するための薬は現状ありません。

現在のところ治療には、対人スキルやコミュニケーションスキルを学ぶ「ソーシャルスキルトレーニング」が有効とされています。

得意 ・集中力が求められる作業
・人が見落としがちな部分に気づく
・得意分野に秀でたスキル
不得意 ・「あれ」「これ」という曖昧な表現を理解できない
・人の気持ちを察せられない
・マルチタスク

ADHD(注意欠陥・多動性障害)

「ADHD」も発達障害の一つで、「注意欠陥・多動性」と名のつく通り、不注意や忘れ物が多かったり、常に落ち着きなく衝動的な行動をしてしまったりといった症状があります。

発達障害は脳機能の偏りが主な原因のため一見して障害であるようには見えません。そのため、特にADHDについては「変わった人」と見られて、うつ病などを併発してしまうケースがあります。

原因 ADHDもほとんどが遺伝的な脳機能の障害という見方が大勢を占めます。
治療 ADHDに関しては衝動性や多動性を抑える薬物治療が可能ですが、あくまで抑制するだけで完治させる目的で使用される薬ではありません。

そのため、カウンセリングやソーシャルスキルトレーニングが主な治療方法となり、症状が重いときに薬も併用するといった方法が取られます。

得意 ・人とは違うアイディアや発想を生み出せる
・得意分野に対する高い集中力
・チャレンジ精神が高い
不得意 ・集中力が求められる作業
・計画的な作業
・マルチタスク

LD(学習障害)

「LD(学習障害)」は知的障害ではないものの、読み書きや会話といった特定の部分における脳の発達や機能的な障害のある疾患です。

LDも発達障害の一種であり、やはり先天性の精神疾患として分類されます。

原因 LDの原因はほとんど解明されていませんが、育った環境やストレスなどは全く関係なく、遺伝的要因とする説が有力です。
治療 LDに対する薬物治療はできないため、「読む」「書く」「計算する」「推論する」などにおいて、どれが困難であるかを特定することが先決となります。

専門の医療機関や支援機関に相談し、困難な部分を補う訓練を行うのが唯一の治療法と言えるでしょう。

得意・不得意 LDという障害の特性上、「何が得意」「何が不得意」を断定することはできません。

企業が学習障害のある方を採用するなら、本人や医師、支援機関との連携により合理的な配慮ができるよう環境を整える必要があります。

まとめ

精神障害は何がきっかけで発症するかわからない疾患も多く、仕事という面においては症状が悪化する作業を行わせないことがポイントになります。

また、得意・不得意と画一的に考えるのではなく、治療方法も合わせて理解していれば採用後の配属や作業指示も出しやすくなるでしょう。

まずは障害そのものを理解することが、精神障害者を採用するためにやるべき企業側の配慮と言えるのではないでしょうか。

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