「特別障害給付金と障害年金の違い」をわかりやすく解説

「特別障害給付金と障害年金の違い」をわかりやすく解説

特別障害給付金と障害年金の違いをご存知でしょうか。

実は特別障害給付金はまだ創設されて間もない制度。以前は障害を持っていても国からの保障を受けられない人たちがいたため、福祉的措置として新しく設けられたものです。今回は少し複雑な特別障害給付金と障害年金の違いについてわかりやすく解説します。

特別障害給付金制度の基になる「障害年金」とは?

特別障害給付金と障害年金の違いを理解するには、まず「障害年金」の基礎を知る必要があります。

障害年金は、国民年金に加入していて障害の状態にある人が受けられる公的年金です。受給できる障害年金額は等級によって異なります。また、障害年金を受給する人に子どもがいる場合は、子の人数に応じて加算されます。
なお、障害年金における等級は国民年金法施行令に基づいて認定されるため、障害者手帳の障害等級とは別物です。

【障害年金の受給額(2020年現在)】
1級:年額977,125円 + 子供がいる場合の加算額
2級:年額781,700円 + 子供がいる場合の加算額
子の加算額
1級2級とも:1人目と2人目は1人につき224,900円。3人目以降は1人につき75,000円

特別障害給付金と障害年金の違いを知る上でもう1つ大事なポイントは、「障害年金を受給するための要件」です。

【障害年金の受給要件】
1. 国民年金加入期間中に障害の原因となった病気やケガで初診を受けている
2. 障害等級1級・2級の状態であると認定されている
3. 国民健康保険料を国民年金加入期間の3分の2以上納付している。65歳未満は1年間未納がない

国民年金は20~60歳の自営業者などが加入しなければならない制度で、障害年金を受けるには国民年金に加入していることが前提です。

ただし、20歳未満で年金に加入していない期間に初診日がある場合は、受給要件は問われないので障害年金をもらうことができます。

特別障害給付金制度が創設された背景

今では主婦や大学生も国民年金には強制加入となっていますが、主婦は1986年まで、20歳以上の昼間部の学生は1991年まで加入は任意でした。

旧制度上では20~22歳の大学生や主婦は、以下のように国民年金未加入期間が発生するケースがありました。

加入が義務付けられていない学生や主婦が国民年金未加入期間中に障害を負ってしまったときは、障害年金を受給できませんでした。国民年金に加入していないのだから、障害年金が不支給となっても当然と思われるでしょう。

しかし、前述したように20歳未満の国民年金未加入者は障害年金を受給できる仕組みになっています。同じ未加入者で主婦や学生は障害年金の対象外のため、障害が1級2級に相当するほど重くても障害年金はもらえないという矛盾が生じました。

旧制度による矛盾への不満は、各地で国を相手にした訴訟という形で表れたのです。そこで国は法制度を整備すべく2004年に「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律」を制定。2005年に施行され、20歳以上の国民年金に未加入だった人でも障害年金を受給できるようになりました。

特別障害給付金の受給要件や受給額

では、現在の法制度上における特別障害給付金の受給要件などを見てみましょう。

【特別障害給付金の受給要件】
1. 国民年金未加入期間に障害で初診を受けている以下に該当する人
 a. 1991年3月以前に国民年金に未加入だった学生
 b. 1986年3月以前に国民年金に未加入だった配偶者
2. 障害年金の1級、2級に該当する人
【特別障害給付金の受給額(2020年現在)】
1級:年額629,400円
2級:年額503,520円

※特別障害給付金は、前年の消費者物価指数の変動に応じて見直されるため、自動的に受給額が変わります。

特別障害給付金の支給開始は障害があると認定された翌月となり、2、4、6、8、10、12月の偶数月に2か月分がまとめて支給されます。

もちろん自動で支給されるわけではありませんので、支給希望者は所定の手続きを行い、自ら請求する必要があります。請求窓口は、住所地の市区役所・町村役場です。

特別障害給付金の受給に必要な書類と注意点

最後に、特別障害給付金を受給するために必要な書類と注意点をまとめてみます。

障害年金を受給する際に提出する書類とほぼ同じですが、初診日の時点で学生で国民年金未加入の場合、学生だったことを証明する書類が必要です。

また国民年金未加入の配偶者は、婚姻記録を確認するため必ず戸籍謄本が必要になります。

【必要書類】
1. 特別障害給付金請求書

日本年金機構-特別障害給付金請求書に所定様式あり

2. 年金手帳または基礎年金番号通知書

3. 障害に関わる診断書

日本年金機構-診断書(精神の障害用)に所定様式あり

4. 病歴と就労状況等申立書

日本年金機構-病歴・就労状況等申立書に所定様式あり

5. 受診状況等証明書

日本年金機構-受診状況等証明書に所定様式あり

6. 特別障害給付金所得状況届(所定様式は自治体に確認)

7. 生年月日を明らかにできる書類(戸籍謄本、住民票、マイナンバーカードなど)

8. 他の公的年金を受給している場合は受給額がわかる書類

9. 初診日に国民年金未加入の学生だった人が上記1~8に加えて必要になる書類
 a. 在学(籍)証明書
 b. 年金事務所が学校に在学確認を取る際の委任状

10. 初診日に国民年金に未加入であった配偶者が上記1~8に加えて必要になる書類
 a. 戸籍謄本か戸籍抄本
 b. その他必要に応じて公的年金への加入や受給状況を証明できる書類

注意していただきたいのは「障害と認定されるかどうか」です。特別障害給付金制度では2005年以降、特別障害給付金の不支給が約1400件報告されており、中でも多いのが「障害状態不該当」です。

【参考】特別障害給付金の運用状況 11月

特別障害給付金にかかわらず、障害年金制度には障害認定基準があります。障害年金制度は日常生活に著しい制限を受ける重度の障害者に対して支給される年金です。

等級についても知っておきたいのは、国民年金の制度では1級と2級までですが、厚生年金の制度では3級まであること。さらに厚生年金の場合は障害手当金(一時金)が支給されるケースもあります。

障害認定基準は日本年金機構のサイトにて解説されていますので、必要に応じて確認されることをおすすめします。

【参考】国民年金・厚生年金保険 障害認定基準

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