障害者がキャリアについて考える際、まず何から始めればいい?

障害者がキャリアについて考える際、まず何から始めればいい?


障害者の方が自身のキャリアについて考える時、何となくぼんやりしたイメージはあっても、それを就職や転職、自分の将来にどう活かすべきかイマイチ分からない方も少なくないのではないでしょうか。

例えば、「パソコンが得意」「繊細な作業ができる」「記憶力が良い」「TOEICで高得点を取った」といった自分の長所は大事なスキルですし、今後のキャリア形成で役立つものです。では、これらを活かすためにはどうしたら良いか。

この記事では、自分のスキルを活かしてキャリアアップに繋げる考え方を一つ一つ整理しながら、障害者自身のスキルや経験に当てはめて、今後のキャリアについて考えられる流れで解説します。

現状把握して将来をイメージする「キャリアデザイン」

最初に大事になるのが、障害の有無に関係なく必要となる「キャリアデザイン」です。

キャリアデザインというのは、「仕事で積み重ねたスキルや経験(キャリア)」を「設計、構想する(デザイン)」のことです。これは障害者に限らず、一般的な就職や転職活動、学生の進路相談等で行われています。

しかし、何をどうデザインするのか分からない方もいるかと思いますので、まずは以下の3つを整理して考えてみましょう。

・将来的にどうなりたいかをイメージする
・今の自分に何ができるか(できているか)を把握する
・その将来を実現するために何が必要か考える

キャリアデザインはそんなに難しいことではなく、今の自分を見つめなおして、なりたい将来のために何をすべきかを整理すればいいのです。

例えば、現在すでに働いている方なら今の自分にできることを考えます。

体調管理を怠ったために休みがちになっていないか、評価をもらえる仕事ができているか、自分の得意不得意は何かといったことです。

その上で、就労する障害者を管理する側になりたいとか同業種で独立したいといった目標を立てて、マネジメントや専門知識などどんなスキルが必要になるか他に役に立つ資格などはないか、といったことを考えればキャリアデザインの完成です。

大事なのは、障害を理由に「無理かも」と思わないことです。まずは物事を整理するつもりで「今と将来の理想の自分」を考えてみましょう。

実現するための計画を立てる「キャリアプランニング」

キャリアデザインができたら、今度は「キャリアプランニング」です。「将来に向けて必要なこと」が整理できたら、次はイメージした将来をいつまでに実現するかを考えます。

ただ、現在アルバイトや派遣社員なのに「来年には部長になる!」というような現実離れした目標を立てるのではなく、例えば最終目標を「10年後」と設定して、実現可能なキャリアアップ計画を段階的に立てるようにしましょう。

あくまで一例ですが、障害者雇用枠で働き始めたばかりと仮定し、以下のようなプランニングを考えてみます。

【現在~2年後】
・業務で安定して高い評価を得る
・体調管理に気を付けて皆勤を達成する
【3年~4年後】
・正社員として採用してもらう
・仕事に必要なスキルや資格を取得する
【5年〜6年後】
・業務の改善点や効率化などを積極的に提案する
・提案した業務を管理するポジションに就く
【7年~8年後】
・自分の提案により業績をアップさせて管理職に抜擢される
【9年~10年後】
・障害者雇用を推進するため、特例子会社の設立を提案する
【最終目標】
・特例子会社の責任者になり、サービスを拡充する

一見、大げさな計画のようにも思えますが、障害者の方がキャリアを考えるにあたってプランニングはとても重要なものです。

まずは自分なりのプランニングを考え、障害の特性や症状に合わせて修正すれば、より現実的で自然な形のプランニングができるでしょう。

「キャリアカウンセリング」や職場実習を試してみる

ここまでは既に働いている障害者向けの解説ばかりでしたが、中にはこれから仕事を探すという方もいるかと思います。

その場合、前述までのキャリアデザインやプランニングを事前に作成し、「キャリアカウンセリング」を受けてみることをおすすめします。

理由は「自分のキャリアデザインやプランニングを絵に描いた餅にしないため」です。

ただ、キャリアカウンセリングを専門とした特定の支援団体が決まっているわけではありませんので、まずは「障害者就業・生活支援センター」と「就労移行支援事業所」で相談してみましょう。

どちらも就職相談や面接対策、職場実習までを一貫してバックアップしてくれますが、特に就労移行支援事業所の多くは明確にキャリアカウンセリングを一つのサービスと謳っていますので、今後のキャリアについてより詳しく相談できるかも知れません。

まだ就職先が見つかっていなければ、就職相談も兼ねて障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所に相談してみることをおすすめします。

希望する業界で職場実習を行って新たな気づきを得るかも知れませんし、逆に第三者に相談することで新たな課題が見つかることもあるでしょう。

大事なのは、自分の計画や考えを第三者に話すことで、キャリアプランニングをより実現可能で現実的なものにすることです。

「キャリアパス」のある仕事を探して経験を積む

そして最後に大変重要なことになりますが、キャリアについて考えるなら、それを実現できる仕事を見つけるのが前提であることを忘れないようにしましょう。

逆に、キャリア形成を考えて実行に移し、途中で「求人を探すこと」や「評価を得ること」が最終目標のようにならないよう注意することも大切です。

つまり、自分で考えた目標やプランを実現するため、働く会社が「キャリアパス」を用意しているかどうかが、目標を実現できるかどうかの分かれ道になるということです。

キャリアパスを簡単に言い換えると、「キャリアアップするための配置転換や制度、昇給があるか」ということですが、ここで2016年に株式会社ゼネラルパートナーズが行った、障害者へのアンケート結果をご覧ください。

Q.キャリアアップをすることに関心はありますか?
とてもある:45%
まあまあある:35%
あまりない:15%
全く無い:15%
Q. 現職または前職では、入社後に仕事の幅が広がりましたか?
同じ会社の一般社員と比較して、広がった:24%
同じ会社の一般社員と比較して、同等:24%
同じ会社の一般社員と比較して、広がっていない:52%
Q.現職または前職では、入社後に昇進・昇格しましたか?
同じ会社の一般社員と比較して、早く昇進・昇格した:4%
同じ会社の一般社員と比較して、同等に昇進・昇格した:5%
同じ会社の一般社員と比較して、昇進・昇格が遅かった:4%
昇格・昇進をしていない:87%

【引用】株式会社ゼネラルパートナーズ「障がい者のキャリアアップに関する調査Report」

障害者の多くがキャリアアップを望んでいるものの、実際には任される仕事の幅も広がらず、昇進も昇格もできていないことが分かります。

実際、同調査の中では「今の会社に昇格の機会がない」「障害者の目標管理や昇給の制度がない」という声も取り上げられています。

せっかくキャリアデザインやキャリアプランニングを作って実行に移しても、実際に勤めた企業でキャリアパスの環境が整っていなければ実現することは難しくなります。

障害者が自分のキャリアについて考える時、最終的に大事になるのは「キャリアパスのある会社」に就職することです。

経験を積むという意味で一時的に働くという選択肢もありますが、自身で考えたキャリア設計を忘れることのないようにしましょう。

まとめ

キャリアアップやキャリア形成の方法として、PDCAサイクル【PLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(検討)→ACTION(改善)】を応用した考え方があります。

この流れは面接前の就活生の間でよく使われる手法ですが、こと障害者の方の就職という点で考えると、計画していきなり実行とはいかない事情もあるかもしれません。

そこでこの記事では、PDCAではなく【ACTION(自分への評価と改善)→PLAN(将来どうするかの計画)→CHECK(自分の計画は間違っていないか)→DO(行動に移す)】の「APCD」の流れで解説させていただきました。

最初にお伝えした通り、障害を理由に「できない」と考えるのではなく、まずは上記のAPCDで現状から将来までを整理して、どのようなキャリアを積んでいくのか考えてみてはいかがでしょうか。

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