障害者向け業務の切り出し方とコミュニケーション方法

障害者向け業務の切り出し方とコミュニケーション方法

障害者雇用を検討する企業にとって、最も難しい課題と言われているのが「業務の切り出し」と「コミュニケーション」。せっかく障害者を雇用しても、業務の切り出しやコミュニケーションが上手くいかずに退職してしまうケースも少なくありません。しかし、なぜ障害者雇用において業務の切り出しとコミュニケーションが大事なのでしょうか。

実は業務の切り出しとコミュニケーションは障害者の就労環境を改善するだけでなく、雇用する企業にとってもメリットが多いのです。そこで障害者雇用における業務の切り出しとコミュニケーションについて、具体的にどんな方法やメリットがあるかを解説いたします。

障害者雇用で失敗しない為の業務切り出しとコミュニケーション

障害者雇用で大事なポイントはいくつかありますが、最も重要とされるのが「業務の切り出し」と「コミュニケーション」の2つ。業務の切り出しとコミュニケーションが円滑であれば、働く障害者本人だけでなく、企業にとっても大きなメリットになるためです。

【業務切り出し】
仕事をする上で業務があるのは当然のこと。業務が少なすぎると働く人のモチベーションは続きません。既存の社員が後回しにしがちな作業をフロー化して業務として切り出せば、障害者だけでなく既存社員の生産力アップに繋がります。
【コミュニケーション】
コミュニケーションは、方法によって障害者の定着率や離職率に大きく影響すると言われます。コミュニケーション方法が間違っていれば障害者本人が悩みや困難を一人で抱えこむことになりかねません。相談できる体制や障害の特性に合わせた言葉や表現方法などは、社内で共有することが求められます。

障害の種類にもより対応は違いますが、特に「トリガー」と呼ばれる「言ってはいけない言葉」や「適切ではない対応方法」というのがあります。また「あれやっておいて」「適当に片しておいて」など、曖昧な指示も障害者雇用では避けなければいけません。

障害者雇用において業務の切り出しとコミュニケーション方法が問題なければ、企業の障害者雇用を安定させる効果があります。業務の切り出しとコミュニケーションの確立は、障害者を雇用する企業にとって大変重要な課題なのです

障害者の業務切り出しができない企業が多い

実際に障害者を雇用する企業は、必ずと言っていいほど業務の切り出しで苦労すると言われます。理由は業務の切り出し方を知らないためです。事実、厚生労働省が公表している「障害者を雇用しない理由」という調査データによると、「障害者に適した業務がない」と考えている企業が非常に多いことが分かります。

【出典】厚生労働省 平成30年度障害者雇用実態調査結果

では、コミュニケーション面についても見てみましょう。グラフは同じ厚生労働省の平成30年度障害者雇用実態調査結果より抜粋した、精神障害者に対する企業の配慮事項です。

【出典】厚生労働省 平成30年度障害者雇用実態調査結果

6つ目の「業務実施方法についてのわかりやすい指示」や、グラフ下部の「手話通訳の配置等コミュニケーション手段への配慮」といった配慮がなされているのが分かりますが、コミュニケーションの重要性を考えると心許ない印象もあります。

短時間労働や休暇、通院への配慮も大事ですが、やはり障害者が安心して働ける環境作りにおいて、業務の切り出しとコミュニケーション方法の確立は現在の最重要課題と言っても過言ではないでしょう。

なお、障害者雇用における合理的配慮については以下の記事にて詳しく解説しています。

精神障害者の合理的配慮事項ランキング10選

具体的な業務切り出し方の例

それでは障害者雇用での切り出す業務に焦点を絞って、具体的にどのような方法があるか見てみましょう。まず以下の4つが候補に挙げられます。

1. 明らかに既存社員が後回しにしている作業
2. 納期がない、またはゆっくりでも可能な作業
3. 多くの判断が求められないフロー化された作業
4. 対人関係を多く必要としない作業

上記を基にすると、具体的には以下のような作業が挙げられます。

・郵送物の封入、発送業務
・データ入力
・書類チェックやファイリング
・資料の整理やPDF化
・労務関連の事務補助
・会議の準備
・アンケートの集計
・画像作成や編集
・インターネットによる市場調査
など

障害者雇用でどんな業務を切り出すかは、社内で行われている業務を一度フロー化すると見えてくると言われています。各部署の社員から障害者にやってもらいたい仕事はないか聞いてみるのも良いでしょう。切り出す業務が決まったら、あとはコミュニケーション方法を工夫してどのように指示を出すかが重要です。

業務切り出しだけでなくコミュニケーション方法にも工夫を

障害者に限らず、仕事をする上でのコミュニケーションには様々な手段や方法があります。

・口頭説明(対面、電話、リモート)
・メモ書きを渡す
・指示書(マニュアル)で業務説明
・メールやチャットで説明
・別の担当者を通して伝達

最も気を付けなければいけないのは「口頭説明」です。障害の特性によっては業務指示が曖昧だと理解できず、障害者が一人で悩んでしまうケースが少なくありません。そのため障害者雇用では、以下の点に注意した指示出しやコミュニケーション方法が求められます。

・「5W1H」を明確にした指示を出す
・順序立ててゆっくり説明する
・一度だけでなく繰り返し説明する
・メモを取っている間は待つ
・作業指示は一つずつにする
・いつでも相談できる体制を整える
・指示を出しっぱなしにせず進捗をこまめに確認する
・変更事項は急に伝えず早めに伝える

上記のような伝達方法に慣れてくると、障害者への指示出しだけでなく社内での伝達方法の質も上がります。障害者雇用の業務切り出しやコミュニケーション方法を工夫することは、今まで曖昧になっていた業務フローや連絡方法を見直す意味でも有効です。

障害者雇用を検討するなら労働条件や就労環境への配慮だけでなく、業務の切り出しやコミュニケーションについても障害者と一緒になって考えてみてはいかがでしょうか。

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