精神障害者の就職率が高い職業と職種別の離職率の違い

精神障害者の就職率が高い職業と職種別の離職率の違い

精神障害者の離職率や就職率が職業別で全く違うのをご存知でしょうか。

統計上、「マニュアル化しやすい仕事」や「判断力を必要としない仕事」が最も就職率が高く、離職率も低くなっており、逆に「コミュニケーション力」「マルチタスク」「個別の判断」が要求される仕事はあまり向いているとは言えません。

では、実際の統計データはどんな職種でどんな結果になっているのか。国や研究機関が公表する離職率や就職率のデータを基に、精神障害者に向いている職種を考えていきます。

精神障害者の就職率が高い職業ランキング

最初に精神障害者はマニュアル化しやすい仕事や判断力を必要としない仕事が向いているとお伝えしたのは、「体調が悪くなっても替わりがいる」「大きなミスでなければカバーしやすい」という理由からです。もちろん全ての仕事でそうとは限りませんが、精神障害者は事務や単純作業の多い業種で就職率が高いという統計を見ると明らかです。

【参考】厚生労働省 平成30年度障害者の職業紹介状況等

精神障害者の就職率は「事務的職業」「運搬・清掃・包装等の職業」が圧倒的に高くなっており、次いで「サービスの職業」「生産工程の職業」になります。

精神障害者は気分にムラがある事が多く、精神障害者に含まれる発達障害は仕事でミスが多いといったケースも少なくありません。よって個人の向き不向きより障害の症状をベースに向いている職業を考えると、代替要員の確保やミスをカバーしやすい仕事が向いていると言えるのです。

離職率の高い職種TOP3とその理由

精神障害者にとって就職率は大事ですが、さらに重要なのが仕事を続けられるかどうか。障害者に関する統計データの多くは「知的」「身体」「精神」の3つに分けられていますが、最も離職率の高いのは精神障害者です。精神障害者の離職率が高い職種を定着率ベースで見てみましょう。

【参考】障害者職業総合センター 研究部門 障害者の就業状況等に関する調査研究

障害者職業総合センターが公表しているデータで最も離職率が低い(定着率が高い)のは、「事務」「販売」「運搬・清掃・包装」の職業。特に事務はマニュアル化しやすく個別の判断を求められる場面は多くありません。

補助的な業務や簡単な業務が多いため離職率が低いと考えられますが、3か月以内に2~3割が離職し、1年以上継続して就労しているのは4~5割ほどですので、決して低い離職率とは言い難い状況です。

興味深いのは、販売の仕事は就職率が低いものの運搬・清掃・包装より定着率が高い点。一般的に接客や折衝などが必要な職種は精神障害者に向かないと言われますが、業務内容がマニュアル化されていれば対応できたり、障害の特性に合わせてアパレルや店頭販売などで活躍する障害者もいます。あとは求人数が伴えば、販売の仕事も精神障害者におすすめと言えるかもしれません。

離職率の低い職種TOP3とその理由

【参考】障害者職業総合センター 研究部門 障害者の就業状況等に関する調査研究

逆に最も離職率が高い(定着率が低い)のは、「生産工程」「専門・技術」「サービス」の3つ。先ほどの事務や販売、運搬・清掃・包装といった職種と比較すると、個別の判断が求められたり場合によってはマニュアル化しにくい職種と言えます。

販売と似た職種に「サービス」がありますが、実は仕事内容は全く違います。参考までに、厚生労働省が定めている「職業分類」で示されている具体的な職業を簡単にまとめてみましたのでご覧ください。

【販売】
・販売店員
・移動販売
・商品仕入れ
・不動産売買
・保険外交員
・各種営業
【サービス】
・家政婦
・介護職員
・理容師
・調理人
・芸者・ダンサー
・ビル・駐車場管理人
・広告宣伝員

サービスの職業は適宜判断を求められたりマニュアル化しづらい職種であり、販売であれば接客や対応フローなどをマニュアル化しやすいと言えます。つまり、サービス業は精神障害者に向いた職業とは言い難いのです。

もちろん営業職はマニュアル化しやすいとは言えませんし、判断力どころか精神力も求められるため精神障害者に向いているとは言えませんが、店頭でレジを打ったり、商品を補充するといった範囲の業務であれば対応可能です。

接客が必要な点では販売もサービスも共通していますが、やはり精神障害者に向いているのはマニュアル化が可能で判断力を求められない仕事と言えるでしょう。

※データのうち「輸送・機械運転」「建設・採掘」「保安」「農林漁業」「管理」の4つは、もともと就職率が低くデータの母数も小さいため除外しました。

精神障害者の離職率を下げる10のポイント

精神障害者の就職で最も懸念されるのが、やはり「離職率の高さ」。1年以内に半数以上が離職してしまうというのは、決して少ない数字とは言えません。

精神障害者の離職率を下げるには就職前の段階から工夫が必要ですが、具体的にどんな工夫が必要かまとめましたのでご覧ください。

1. 障害の特性や症状、必要な配慮を面接時に必ず本人に確認する
2. お試し期間や職場実習などの期間を設ける
3. 体調の変化を日報などに付けてもらって双方で確認する
4. 業務進捗も日報で確認して困ったことや悩みがないか早めに確認する
5. 日報とは別に定期的に面談する機会を作る
6. 職場定着支援を行う支援機関と連携する
7. 業務内容や作業指示を工夫しては分かりやすくする
8. 障害者雇用について社内の理解を深める施策を行う
9. 昇給や昇格など能力に応じた評価制度を導入する
10. そもそも本人の障害に対する理解と把握も重要

今回ご紹介した10のポイントは以下記事にて詳しく解説しています。

精神障害者の離職率を下げるための10のチェックポイント

また、最近では「SPIS」という、日報代わりに使用できて体調の変化を可視化できるツールもあります。

「SPIS」で体調の変化を見える化!セルフケアが障害者の離職率を下げる?!

障害者雇用も徐々に認知され始め、国による支援体制も少しずつ充実してきています。企業や採用担当、直属の上司などが独自に精神障害者の対応を考えるのではなく、専門家の意見を聞きつつ支援機関を活用するのが精神障害者の離職率を低下させる重要なポイントと言えるでしょう。

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